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子どもの運動神経を伸ばしたい、または運動神経を伸ばす習い事をさせたいと考えている。
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子どもには将来的に何かスポーツをさせようと思っている。
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子どもが小学校に入ってから体育の授業で苦労しないか心配。
お子さんがもう少し大きくなったら、スポーツをさせてあげたいとお考えの親御さんは多いと思います。
その一方で、自分の運動神経に自信がなくて、お子さんも同じように運動が苦手にならないか心配な方もいらっしゃるのではないでしょうか?
私もその一人で、運動はからっきしです。
小学生のときから体育は苦手でした。
せめて息子には体育の授業で苦労しないように、3歳の今から運動神経を伸ばしてあげたいと望んでいます。
では、子どもの運動神経を良くするにはどうすればいいのでしょうか?
水泳が良いとか、ダンスが良いとか、体操が良いとか、色々とウワサは効くけれど、どれが本当に運動神経が伸びやすい習い事なのか分かりませんよね。
それに、うちの息子は今3歳ですが、今の時期に一番必要な運動をさせてあげたいと思いつつも、どの運動が今の息子にとってそうなのか分からない…(汗)。
そこで科学的な知見を調べてみることにしました。
すると、5歳までに運動神経を伸ばしておかないと、5歳の時期に現れる「運動技能熟達の壁」というものを越えられず、そこから先は運動オンチな人になってしまうという、恐ろしい研究報告を見つけました(戦慄…!)。
そして親切なことに、同じ論文内でその「運動技能熟達の壁」を越えられるようにするための、幼児期にやっておくべき運動あそびの具体例も紹介されていました。
今回はその運動あそびの具体例をイラストを交えてご紹介していきたいと思います。
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子どもの運動神経を伸ばすには、幼児の頃からしっかり運動させるべき
スキャモンの発育曲線というものをご存知でしょうか?
「習い事をはじめるなら3歳からが良い」とされる根拠によく挙げられているので、ご存知の方もいらっしゃるかも知れません。
これは1930年にスキャモン氏が発表した「子どものそれぞれの臓器についての年齢による発達度合い」を調べたものです。
このスキャモンの発育曲線によると、子どもの臓器の発達は大きくわけると次の4つのパターンに分けられます。
- 身長・体重・骨格・筋肉量などの発達パターン(一般系型)
- 脳や脊髄などの神経系の発達パターン(神経系型)
- リンパ腺などの発達パターン(リンパ系型)
- 生殖器などの発達パターン(生殖系型)
この4つのパターンのうち運動能力の発達に大きく関わるのは一般系と神経系の発達です。
特に神経系は3~4歳の時期に最も発達します。
そしてこの神経系の発達が次の運動能力の発達に大きく影響します。
- 平衡性: ある一定の姿勢を保つ能力
- 敏捷(びんしょう)性: ある動作を正確に素早く行う能力
- 協応性: 目と手、足など複数の器官を同時に使う能力
- 巧緻性: 手や指先の器用さ
(※筋力や瞬発力、持久力などは一般系の発達で親からの遺伝が影響するらしいです。)
これらの能力が身につくことで、動きを上手に滑らかに、そしてしなやかに行うことができるようになります。
また、1980年に報告された「運動能力や体力はいつ発達するのか」を調べた別の研究(宮下充正「子どものからだ」東京大学出版会 1980 )では、運動技能に必要な能力は子どもの年齢によって発達する量に差があることが報告されています。(下図)
この研究結果から幼児期には神経系の発達を促す活動を、小学生・中学生では持久力や精神力などの粘り強さが身につく活動を、骨格や筋肉が完成する思春期以降では力強さが身につくような活動を経験することが重要だと報告されました。
さらに、1990年にブラウン氏が発表した「子どもの運動技能発達のピラミッド」(下図)によると、1~5歳頃までの「基本の動作」を習得する段階と、5~7歳頃までの「より複雑な動作への移行」をする時期との間に、『運動技能熟達の障壁』が存在することが提唱されました。
この『運動技能熟達の障壁』は基本動作を5歳頃までに経験しておかないと、成長にともなう運動能力の向上に障壁ができ、新しい『技術』を獲得するのが困難になるとされるものです。
つまり、5歳頃までに基本動作ができるようになっておかないと、私の子ども時代のように、運動オンチな子になってしまうということです。
全くもって、ぞっとする話ですよね…!(怯え)
では、わが子を運動オンチな子にさせないためには、どんな運動をさせればよいのでしょうか?
それについても論文内で提唱されていたので、次にご紹介していきます。
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子どもの運動神経を伸ばすための運動あそび 具体例
幼児期に必ず経験しておくべき運動とは、次の3つの運動のことです。
- いろいろな「体位感覚」を経験できる運動
(自分の身体が今どんな状態であるかを把握して、どうすれば元の状態に戻れるかを考えて実行できる能力を養う運動のこと。) - しっかりと歩いたり、走ったりする運動
- さまざまなリズムで動く運動
(ヒトの動きは通常、歩くという2拍子の動作が基本ですが、例えばスキップやギャロップ、3拍子の動きなどの様々なリズムで身体を動かす運動のこと。)
このうち、1つめのいろいろな「体位感覚」を経験できる運動について、次の15種類の運動あそびをご紹介します。
①カエルの足打ち
床に手をつき、両足をジャンプさせます。
そして、空中で両足の裏を合わせる運動あそびです。
これなら、運動神経の悪い私でもできます(笑)。
でも、うちの3歳の息子は初めてやって見せたら「できない」と言いだしました。
まだ腕の力や床を蹴る力が弱いので、ちょっとずつ練習させる必要があると思います。
②逆さ壁倒立
床に手をつき、壁に向かって両足をジャンプさせます。
そして、そのまま壁側に倒れるようにして倒立するという運動あそびです。
これは、運動神経の悪い私にはできません(泣)。
また、うちの息子は足をジャンプさせて倒立することはできませんが、壁にお尻を向けて床に手をつき、足を壁づたいによじ登らせて倒立っぽい態勢をすることはできます。
この運動あそびも、引き続き練習が必要です。
③ブタの丸焼き
鉄棒に上の図のようにぶら下がる運動あそびです。
これなら、運動神経の悪い私にもできますね。
また、うちの息子ももう少し練習が必要そうですが、なんとかできそうです。
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④コウモリ
鉄棒に上の図のようにぶら下がる運動あそびです。
やってみると結構怖いです。
うちの息子にやらせる場合は補助が必要だと思います。
⑤鉛筆回り
両腕を頭の上にまっすぐ伸ばし、両足もぴんと延ばして揃えたたまま、マットの上をコロコロと転がる運動あそびです。
簡単ですが、意外と疲れます。
うちの息子でもこれはできました。
でも、もっと早く回れるように練習したいと思います。
⑥布団干し
鉄棒に上の図のようにぶら下がる運動あそびです。
これは運動神経の悪い私にもできますね。
うちの息子もできますが、初めは手を放すのを怖がるので補助が必要でした。
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⑦たまご回り(横転)
両腕で膝を抱えた状態で、マットの上を横向きにコロコロと転がる運動あそびです。
簡単そうですが、結構難しいです。
この運動あそびもうちの息子はまだできないので練習したいと思います。
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⑧時計回り
鉄棒に上の図のようにぶら下がり、そのまま手首の力と体重移動でくるっと回転する運動あそびです。
握力やバランス感覚などが必要になりますので、結構難しいです。
体重が軽い子どもの方がまだやりやすいと思うので、練習させてあげようと思います。
⑨ゆりかご
両腕で膝を抱えた状態で、マットの上をゆりかごのように縦方向にゆらゆらと揺れる運動あそびです。
これは簡単なので、運動神経の悪い私にもできます。
うちの息子はまだゆらゆらと揺れるのが上手にできないので、練習したいと思います。
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⑩側転
わざわざ説明せずともその名の通り、側転です。
これはかなり難しいと思います。
ただ、幼児は頭が大きく重心が上の方にあるので、大人が習得するより比較的簡単にできるようになるそうです。
⑪跳び箱などからの飛び降り
こちらもわざわざ説明せずとも、そのまま飛び降りるという運動あそびです。
これはうちの息子も大好きで、階段やちょっとした段差、台やイスの上からしょっちゅう飛び降りています。
ただ、幼児は足の骨もまだ柔らかいので、骨折などには注意が必要です。
⑫足抜き回り
鉄棒にぶら下がり、自分の腕の間を上の図のように抜ける運動あそびです。
これも意外と難しいと思います。
最初は補助をしてあげながら練習させてあげるのが良いと思います。
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⑬アヒル歩き
図のようにしゃがんだ状態で歩く運動あそびです。
これは簡単にできると思いますが、速く長く歩けるように練習すると良いと思います。
⑭前回り降り
鉄棒で普通に前回りして、そのまま降りる運動あそびです。
鉄棒に慣れていない子どもは上体を鉄棒より上に上げることが難しいかもしれません。
最初は補助をしてあげながら練習させてあげるのが良いと思います。
⑮木馬歩き
図のように四つん這いになった状態で歩く運動あそびです。
これも簡単にできると思いますが、速く長く歩けるように練習すると良いと思います。
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子どもの運動神経を伸ばしたいなら体操とダンスを習うのがおすすめ
先ほどご紹介した幼児期に必ず経験しておくべき3つの運動をもう一度振り返ります。
- いろいろな「体位感覚」を経験できる運動
(自分の身体が今どんな状態であるかを把握して、どうすれば元の状態に戻れるかを考えて実行できる能力を養う運動のこと。) - しっかりと歩いたり、走ったりする運動
- さまざまなリズムで動く運動
(ヒトの動きは通常、歩くという2拍子の動作が基本ですが、例えばスキップやギャロップ、3拍子の動きなどの様々なリズムで身体を動かす運動のこと。)
先ほど1つめのいろいろな「体位感覚」を経験できる運動について具体的な運動あそびの例をご紹介しましたが、内容的には「体操」の分野だと思います。
ですので、わが家のように親が運動に自信がなくて子どもに教えてあげられないという場合は「体操教室」にお子さんを通わせてあげると良いと思います。
また、親が教えてあげられるけど、近くに鉄棒のある公園が無いという方は、家庭用の鉄棒も売られています。
また、鉄棒の下にはマットを敷いてあげた方が、お子さんのケガを防げると思います。
また、3つめのさまざまなリズムで動く運動については、スキップやギャロップ、3拍子のリズムで身体を動かすなど、家庭でもできそうな運動もありますが、より効果的にこの運動を習得させるなら「ダンス教室」が良いと思います。
まだお子さんが小さくて教室に入会できないなら、お家でダンスレッスンのDVDを一緒に見て練習するという方法もあります。
わが家で購入した、おすすめの市販のレッスン本はこちらです↓
小学生のためのカッコカワイイなりきりダンス〈Vol.2〉ヒップホップダンス編―目標8時間!!
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習い事の教室選びは上手なお手本を何回でも見せてくれるかどうかをチェック
では実際に体操教室やダンス教室を選ぶ際にはどのような点に注目して教室を選べば良いのでしょうか?
もちろん、子どもと先生の相性や教室の雰囲気などが一番大事ですが、脳科学的な観点からすると、「良いお手本を何回も見せてくれる」教室を選ぶのが上達への近道のようです。
脳にはミラーニューロンと呼ばれる神経細胞が存在しています。
ミラーニューロンとは自分自身が行動する時と、他者が行動するのを見ている状態の両方で活性化する神経細胞です。
つまり、自分は動いていないのに、他者の動きを見るだけで脳内ではあたかも自分が動いている時と同じように反応しているということです。
ミラーニューロンは生後12か月までに発達することが報告されています。
その役割は他者への共感や感情理解、言語や動作の習得などが報告されていますが、まだ詳しくは解明されていません。
このミラーニューロンが関与していると思われる、他者の動きを真似する能力(コピー能力)が高い人は上手なお手本を見ることで、自己練習のみを行った場合よりも運動技能が向上することが報告されています。
逆に、下手なお手本を見ると運動技能が低下することも報告されています。
つまり、悪いところまで無意識にコピーしてしまうと言うことです。
一方、コピー能力が低い人は上手い下手にかかわらず、お手本を見てもあまり影響を受けません。
下手なお手本を見た場合だけで比較すると、コピー能力の高い人よりも運動技能のパフォーマンスレベルが高くなることが報告されています。
ですので、自分の子どものコピー能力が高いのか低いのかは分からなくても、少なくとも上手なお手本をしっかりと何回も見ることができるという事はプラスにはなってもマイナスにはならないと言うことです。
逆に、下手なお手本を見てしまうことは百害あって一利なしということです。
先生のお手本が上手なのは当然ですが、教室に来ている周りの生徒さんの技能レベルが低ければ、コピー能力が高い子はそれを見ただけで無意識にコピーしてしまうため、運動技能の向上に悪い影響を受けてしまいます。
つまり、わが子の運動レベルより少し上のレベルの生徒さんが多い教室、または先生がマンツーマンレッスンをしてくれるコースがある教室を選ぶことが、脳科学的に考えられる上達への近道ということです。
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まとめ
―運動神経が良い子にするには、幼児期から適切な運動を習得させることが重要
では、これまでのお話をまとめます。
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子どもの運動神経を伸ばしたい、または運動神経を伸ばす習い事をさせたいと考えている。
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子どもには将来的に何かスポーツをさせようと思っている。
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子どもが小学校に入ってから体育の授業で苦労しないか心配。
↑このようにお考えの親御さまは、ぜひ神経系の発達が目覚ましい幼児期に必ず経験しておくべき運動を習得させて、5歳頃に現れるという『運動技能熟達の障壁』を乗り越えられるようにしてあげてください。
その必ず経験しておくべき運動とは次の3つです。
- いろいろな「体位感覚」を経験できる運動 ⇒ 体操がおすすめ!
(自分の身体が今どんな状態であるかを把握して、どうすれば元の状態に戻れるかを考えて実行できる能力を養う運動のこと。) - しっかりと歩いたり、走ったりする運動
- さまざまなリズムで動く運動 ⇒ ダンスがおすすめ!
(ヒトの動きは通常、歩くという2拍子の動作が基本ですが、例えばスキップやギャロップ、3拍子の動きなどの様々なリズムで身体を動かす運動のこと。)
この運動のうち1のいろいろな「体位感覚」を経験できる運動については鉄棒やマット運動などの体操が、3のさまざまなリズムで動く運動についてはダンスが適しています。
鉄棒やマット運動については、先にご紹介した運動あそびの具体例を参考にしてください。
その際、できるだけ上手な見本をたくさん見せてあげることが子どもの運動技能の上達に脳科学的に有効だと報告されています。
これまでの科学の知見を活かして、効果的にわが子の運動神経を伸ばしてあげていきたいものですね。
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参考文献
運動の発達 について
幼児期の発育発達からみた運動遊びの考え方
幼児期における基本運動の発達段階-知的障害児のためのアセスメント法の開発-
ミラーニューロンについて
自動模倣傾向の個人差が観察による運動学習の効率に与える影響
ミラーニューロン - Wikipedia
Infants predict other people's action goals