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子どもがYoutubeやゲームに夢中で長時間スマホを手放さなくて心配。
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スマホを取り上げると、子どもが怒って手がつけられないので困っている。
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なんとかして子どものスマホ依存をやめさせたい。
お子さんがYoutubeをずっと見ていたり、スマホを触ってばかりだと、親としては心配になりますよね。
実のところ、スマホに依存してしまう子どもは年々増えてきているようです。
乳幼児のスマホ依存について調べた2019年の東京大学大学院の研究報告によると、0歳~6歳の乳幼児のうち10人に1人はスマホに依存している傾向があることが明らかになりました。
スマホ依存の傾向がみられる子どもは0歳~6歳の子ども全体で11.6%、2歳児だけでは13.3%という割合でした。
また、総務省による2018年実施の全国調査「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、ネットに依存している人の割合は10代で19.9%、20代で9.1%、30代で4.7%、40代で1.5%となっています(※スマホに限定せず)。
日本小児科学会では、2014年に「スマホに子守をさせないで」という啓発ポスターを作成し、保護者らに乳幼児に対してスマホを長時間利用させないようによびかけています。
しかし、たとえ「子どもにスマホを利用させるのは良くないことだ」と分かっていても、じゃあ、「どうすれば子どものスマホ利用を減らせるのか?あるいは、やめさせることができるのか?」という方法論については情報が少なく、その方法に頭を悩ませる親御さんが多いように思います。
そこで今回は、「依存症の治療方法」に基づいて、子どものスマホ依存を治す方法をご紹介したいと思います。
また、子どもをスマホ依存になりにくい子に育てる方法もご紹介します。
この方法で、うちの息子は、以前は毎日2~3時間もYoutubeやDVDを見ていましたが、今では1週間で1~3時間ほどに減りました。
※子どもが長時間Youtubeを見過ぎて、脳に影響がないか心配な方は、Youtubeやテレビの影響についてのこれまでに報告されている研究結果をまとめた記事も合わせてご覧ください。↓
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子どものスマホ依存を治したいのなら、制限や禁止はむしろ逆効果
まず最初にお伝えしておかなければならないのは、子どものスマホ依存を治すためには子どもにスマホを制限したり、禁止するのは逆効果だということです。
人は禁止されると余計にやりたくなる生き物です。
この心の作用を心理学では「心理的リアクタンス」と呼びます。
親から制限されたり禁止されることで、子どもは一時的にスマホを触るのを控えるかも知れませんが、多くの場合、後から反動が来て、前よりさらにスマホに依存するようになります。
ではどうすれば良いのかというと、「スマホを触る」のを「他の行動」に置き換えるように、子どもを誘導してあげれば良いのです。
子どものスマホ依存を治す方法ースマホの代わりに別のことをさせる
子どものスマホ依存を治すには、「スマホを触る」のを他の「別の行為」に置き換えさせることが効果的です。
例えば、「暇さえあればスマホを触る」のを、「暇さえあれば本を読む」に置き換えることができれば、親御さんも頭を悩ませずに済むはずです(笑)。
もちろん、いきなり子どもにスマホを触るかわりに本を読ませようとしても上手くいきません。
いきなり目的の行動に置き換えさせるのではなく、小さな段階(スモールステップ)に分けて、一つのステップごとにできたらすぐに褒めることが成功のカギです。
例えば、「スマホを触る」のを「本を読む」に置き換える場合、子どもがスマホを触りながらでも良いので、次のようなステップで試してみてください。
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一緒に本を選ぶ(子どもが気乗りしなければ、親が選んでもOK)
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一緒に本を積み重ねたり、本でドミノ倒しや本屋さんごっこなどをして遊ぶ
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一緒に本の表紙を見る
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一緒に本のページをパラパラとめくってみる
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子どもが気になったページがあれば、そのページをじっと観察させる
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子どもが気になったページを親が読んであげ、子どもに耳だけで聞かせる
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子どもが興味を持って本をのぞき込んできたら、一緒に本を見ながら親が読むのを聞く
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親が読みながら、ときどき子どもに文章の一部分を自分で読ませてみる
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子どもが自分で読む範囲を広げさせていく
という風に、できるだけ小さなステップに分け、どんなに小さなステップでも 一つクリアしたらすぐに褒めるということを繰り返してみてください。
繰り返すことで、いつの間にか子どもは「スマホを触る」という行為を「本を読む」という行為に置き換えられるようになります。
子どものスマホ依存を治す方法ースマホの代わりになる遊び・行為の例
では、子どもの「スマホを触る」という行為を、どんな「別の行為」に置き換えさせられるでしょうか?
大切なのは、子ども一人一人の好みや個性に合わせて、子どもがスマホよりも楽しいと感じられるものを選ぶことです。
以下のリストはあくまで一例ですが、例を挙げてみます。
子どものスマホ依存を治す方法ースマホが触れないお外遊びやお出かけに連れて行く
外遊びなら、子どもが自然と手がふさがってスマホを持てない状況、またはスマホを見ていられない状況(ちゃんと足元を見ていないとこけるなど)になりやすいです。
すぐにでも子どものスマホ利用時間を減らしたいのであれば、外遊びに連れていくのがオススメです。
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公園の遊具や砂場で遊ばせる
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2歳以上ならキックバイクで遊ばせる
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3歳以上なら自転車を練習させる
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3歳半くらいからは友達とも遊べるようになるので、友達と一緒に遊ばせる
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ボールで遊ばせる
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鉄棒を練習させる
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虫探しや虫捕りをさせる
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どんぐりや木の実、小石などを拾わせる
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池や川などの飛び石(渡り石)で遊ばせる
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おもちゃの動画が好きなら、おもちゃ屋へ連れて行って遊ばせる
子どものスマホ依存を治す方法ー家の中でもスマホ以外で楽しめることを探す
子どもが朝起きたとき、あるいはお出かけから家に帰ってきたとき、おもちゃや絵本、その他様々なものが家の中にあっても、子どもは勝手に遊びだすことは殆どしません。
なぜなら、意識から忘れてしまっているからです。
そして、一番最初に思い出しやすいのがスマホなので、「スマホを触る」という行為をしてしまうのです。
そこで、子どもがスマホのことを思い出す前に「ぬりえしよっか!」「折り紙で犬をつくってみようか!」「クッキーを一緒に作ろうか!」と親が一声かければ、たちまちそれに乗ってくるはずです。
声掛けのタイミングが非常に重要です。
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ブロックや積み木、人形遊びなどの好きな遊びをさせる
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お絵かきの練習をさせる
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折り紙の練習をさせる
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ハサミの練習をさせる
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ぬりえをさせる
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パズルをさせる
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裁縫(ごっこ)をさせる
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ビーズなどを並べて絵をつくらせる
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絵本を読ませる/読んであげる
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(※アニメ動画を見れるなら、ストーリー性の高い長めの絵本でも子どもはしっかり聞いていられるはずです。)
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洗濯物をたたむなどのお手伝いをさせる
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一緒に料理をさせる
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一緒に掃除をさせる
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宿題や勉強(運筆や数かぞえなど)をさせる
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習い事(ピアノやそろばんなど)の練習をさせる
子どものスマホ依存を治す方法ースマホがなくても楽しめる場所へ行く
「置き換え」とはちょっと違いますが、旅行に連れていくというのも、子どものスマホ依存を治すための良い刺激になります。
ディズニーリゾートやUSJなど、子どもが心底楽しめるところが良いでしょう。
アトラクションの待ち時間にスマホを触ってしまうのが心配であれば、列に並ばないアトラクションで遊べば良いし、幼児ならアトラクションに乗らなくても園内を歩いているだけで充分楽しんでくれます。
また、山登りや川遊びに連れていくのもおすすめです。
山や川は足場が不安定なところが多いため、危なくてスマホなんて見てられませんよね。
うちの息子は4歳になって間もないですが、先日、1時間強の山道を一緒にハイキングできました。
幼児でも休憩さえちゃんと挟めば山歩きできるようです。
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子どもがスマホに依存してしまうのには、じつは理由がある
ここまで、スマホ依存を治す方法として「スマホを触る」のを「別の行為」に置き換えさせることが有効であること、また、置き換える行為のおすすめ例をご紹介してきました。
ここからは、そもそも「なぜ子どもはスマホに依存するのか?」という根本的な問題を振り返ってみましょう。
子どもがスマホに依存する原因1―他にやることがないから
多くの場合、スマホを触るのはヒマだからなんですね。ヒマだから、スマホを触ってしまう。
そのような場合は、新たに習い事に通わせてみたり、親がやることを示してあげたりして、充実した時間の過ごし方を教えてあげれば良いのです(※ただし、忙しすぎるのは逆効果です。)
子どもがスマホに依存する原因2―嫌なことがあるから
なにか嫌なことがある、やらなきゃいけないことが多すぎる、やらなきゃいけないことが自分一人で対処するには大変すぎるなどの理由で、子どもはスマホに逃避している場合があります。
お子さんの習い事や勉強などが詰込み過ぎになっていないか、親の期待が重荷になっていないか、学校での生活や友人関係に問題はないか、一度ゆっくり話し合ってみてください。
お子さんの抱えている悩みに親が共感してあげるだけで、子どものスマホ依存が治る場合があります。
子どもがスマホに依存する原因3―寂しいから
スマホに依存している子どもは意識的に、あるいは無意識で寂しがっている場合があります。
親から構ってもらえず寂しい思いをしているので、寂しさを紛らわせるためにスマホを触っているのかも知れません。
親が仕事や家事にばかり追われていないか、あるいは弟や妹の世話ばかりに追われていないか、はたまた、親自身が子どもの前でスマホばかり見ていないか、振り返ってみてください。
子どもの顔をしっかり見て、たっぷり遊んだり話したりしてあげれば、子どもはスマホを触らなくなるはずです。
子どもがスマホに依存する原因まとめ―依存症治療の研究からみて
以上の3つの要因を子どもがスマホに依存する原因としてご紹介しましたが、なぜこれらの要因が原因となるのか?という点についてもう少し詳しくご説明しておきます。
少し話が飛びますが、依存症の治療の研究分野において「ネズミの楽園」実験という有名な実験があります。
「ネズミの楽園」と呼ばれるストレスフリーな環境に置かれれば、ネズミはモルヒネに興味を示すことはなく、また、モルヒネ依存症のネズミでさえも「楽園」に移すことで、そのネズミはモルヒネに依存しなくなるという実験です(←興味がある方はぜひ検索してみてください)。
この実験によって、「人はなぜ依存症になるのか?」というメカニズムが明らかにされました。
普通の人ならば、どんなにおいしい食べ物や楽しいことでもいずれ飽きてしまいます。
にもかかわらず、なぜ依存症になる人たちはそれを繰り返し続けてしまうのか?
その理由は、その人が「自分でコントロールできない苦痛」から逃れるために「コントロールできる苦痛」の方を選択してしまうからです。
つまり、あるもの(例:アルコール)に依存するのは、それが好きだから依存するのではなく、他の辛い状態(例:孤独など)から回復できる(例:独りであることを忘れられる)から依存するそうです。
「孤独」という「治らない苦痛」よりも「二日酔いで気分が悪くなる」という「時間が経てば治る苦痛」を選択してしまうのです。
この依存症の原理からスマホ依存を考えてみましょう。
スマホ依存の場合、「やらなきゃいけないことがある」「寂しい」「むなしい」という自分では解決できない苦しみから、「スマホを見過ぎて辛い=親に怒られる、時間が無くなる、目が疲れるなど」という少しでもマシな(回復できる)別の苦しみに置き換えて逃げているのです。
つまり、スマホをずっと見ている子どもは「何か」が足りていない、または不満に思っているのです。
例えば、外遊びが足りない、親子の関わりが足りない、友達との遊びが足りない、やることがない、刺激が足りない、暇である、学校生活でトラブルがある、成績が悪い、などなど…。
子どもの抱えている悩みや苦しみは、親や大人から見ればささいなことかも知れません。
ですが、その子どもにとっては一人では解決できない大問題なのです。
子どもの話に耳を傾けて気持ちを分かってあげるだけでも、子どもはかなり楽になるはずです。
あるいは、大人の知恵で案外簡単に解決方法が見つかるかも知れません。
もし、子どもが自分で悩みに気づいてない場合や、うまく言葉にして伝えられない場合は、親が子どもをよーく観察して、抱えている問題を探してやる必要があります。
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スマホに依存しにくい子どもに育てる方法
そもそも、スマホ自体には麻薬のように人を依存させる効力はありません。
にもかかわらず、「スマホ依存」と呼ばれるのは、スマホを見て楽しむことによって、脳内でドーパミンという快楽物質が分泌されるからです。
ドーパミンとは、スマホを見るとき以外にも美味しい物を食べたときや、楽しい経験をしているときに分泌されるものです。
つまり、通常の場合は「楽しい経験⇒ドーパミンが分泌される」のであって、麻薬などが「強制的にドーパミンが分泌される⇒理由もなく楽しい気分になる」のとは違います。
その点を踏まえれば、スマホあるいはYoutubeなどが依存性を備えているわけではないことが分かります。
つまり、たとえYoutubeを見たとしても、それがつまらない動画であればドーパミンは出ないということです。
さて、ここからが本題ですが、ドーパミンが放出される脳の回路(報酬系)は乳幼児の時期に親からのふれあいによって作られることが分かっています。
そのため、乳幼児のときに愛情不足のまま育つと、報酬系が働きにくい脳になります。
※詳しくはこちらの記事をご覧ください↓
つまり、スマホばかり見て育った=親から放置気味で愛情不足の子どもは報酬系が十分に育たず、楽しいことでも「楽しい」と感じにくい脳になってしまうのです。
一方で、スマホ(Youtubeやアプリゲームなど)は人を楽しませるために面白く作ってありますから、誰でもドーパミンが簡単に出るようになっています。
もし、愛情不足で育ち、何事にも「楽しい」と感じられない=ドーパミンが出にくい脳を持つ子どもが、スマホでYoutubeを見たりゲームをした時にしかドーパミンが出ない=「楽しい」と感じられないのであれば、スマホに依存してしまうのは当然です。
さらに、幼少期に親子のふれあいが少なかった子どもは 心の土台(愛着)が不安定になり、その上に築かれるはずの「パーソナリティ」や「非認知的能力」が十分に育つことが難しくなります。
その結果、悩みや問題を抱えやすい人になってしまい、そのため、スマホを含む依存症になりやすい人になってしまうのです。
その一方で、幼い頃にたっぷりと親の愛情を受け取った子どもは 心の土台(愛着や内的作業モデル)がしっかりと安定しており、非認知的能力やパーソナリティも高くなりやすいです。
その結果、悩みや問題を抱えにくいため(←問題解決力やレジリエンスが高いため)、スマホに依存する必要性が生まれず、依存症のリスクも低くなります。
つまり、スマホ依存になりにくい子に育てるには、幼い頃からのスキンシップやかかわり合いを大切することが重要なのです。
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子どものスマホ依存の治し方と予防の方法まとめ―スマホを介さない親子のかかわりが重要
では、これまでのお話をまとめます。
お子さんがずっとYoutubeを見ていたり、スマホゲームばかりしているのを減らしたい、またはやめさせたいとお考えの方は、次の点を念頭にお子さんのスマホ依存を解消していきましょう。
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スマホを禁止したり、制限するのは逆効果です。
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「スマホを触る」のを「別の行動」に置き換えるよう、上手に誘導しましょう。
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誘導する際は、目的の行動に移るまでの段階をできるだけ小さく分け、一つずつクリアしていきましょう。どんな小さな段階でもできたら褒めましょう。
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お子さんがスマホに依存してしまう背景には、何か悩みや問題があるのかも知れません。お子さんの気持ちに寄り添ってあげてください。
ネット上で、「スマホを禁止にしたら、子どもが落ち着いた」と書いてある体験談を見かけますが、これは解釈としては少し間違えています。
「スマホを禁止にしたから」ではなく、実際には、スマホ育児によって愛情不足だった子どもに対して、親がスマホの力を借りずにきちんと子どもと向き合う時間が増えたおかげでその子の愛情不足が解消され、その結果、子どもが穏やかさと落ち着きを取り戻したのだと考えられます。
親がちゃんと子どもに向き合い、十分にかかわってあげれば、子どもは愛着が安定してスマホに依存しにくくなります。
スマホ依存を治す近道は、親がスマホの代わりに子どもの相手をしてあげることです。
とは言え、専業主婦よりワーキングママの方が多い今の時代では、子どもにスマホを全く見せない育児というのは、現実的には難しいように思います。
大切なことは、子どもをスマホに任せきりにしないことです。
たとえ時間は短くとも、しっかりとスキンシップと言葉で子どもに「あなたが大好き」だと伝えましょう。
子どもが「ママ見て!」と言う時は愛情を示す大事なチャンスです。
視線や微笑みを返すだけでも、子どもには愛情が伝わります。
余談ですが、例えば仮に、一日中勉強ばかりして勉強に依存している子どもがいたとしても、おそらく何も問題視されないでしょう。
子どもが依存しているのが「スマホ」だからこそ、親が使いたいのに子どもにスマホを取られて「困っている」からこそ、余計に問題視されてるような気がします。
もしかしたら、スマホに依存しているのは子どもではなく、親なのかも知れません…。
参考文献
- スマートフォンを用いた育児の実態
- スマートフォン等の使用が10歳代前半の児の生活時間に及ぼす影響
- パーソナリティ特性がスマートフォンゲーム依存傾向に及ぼす影響:利用動機に着目して
- 依存症における親密性回避の問題についての考察
- 依存症について考える--健全な人間関係の重要性--
- 依存症の脳科学(< 研究報告> 倫理学者のためのニューロエシックス)
- 育児とICT : 乳幼児のスマホ依存、育児中のデジタル機器利用、育児ストレス
- 小中学生のネット依存と生活満足度 ― 群馬県前橋市調査より―
- 人はなぜ依存症になるのか
- 中学生のインターネットの利用状況と依存傾向に関する調査 - 総務省
- 未就学児等のICT利活用に係る保護者の意識に関する調査報告書(概要版)- 総務省
- 中学生におけるインターネット依存と学校適応, 精神的健康との関連
- 乳幼児とインターネット動画~保護者にゆだねられるルール作り~
- 乳幼児のスマートフォン使用の現状と保護者の意識からみる課題と今後の取り組み
- 本学学生におけるネット依存傾向と愛着スタイルとの関連について