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虫歯になりやすい子となりにくい子の違い 歯磨きや生活習慣よりも重要なのは遺伝的影響

虫歯になりやすい子となりにくい子の違い・原因

虫歯になりやすい子となりにくい子の違いって?
今回のお悩み
    • きちんと歯みがきしているのに、子どもが虫歯になってしまった。
    • 子どもが虫歯になりやすいのは、親の歯みがきの仕方や生活習慣のしつけが悪いせい?
    • 虫歯になりやすい子はどうしたら虫歯を防げる?

 子どもが虫歯になってしまったとき、親としては非常に心配しますよね。

 子どもの歯は、その親が「きちんとその子を育てているか」が判断される目安の一つだと思います。

虫歯だらけの子どもを見ると、「ああ、親がちゃんと歯みがきしてあげてないんだな。お菓子ばっかり食べさせてるんだろうな…」とか、つい考えちゃいますよね。

 と こ ろ が じ つ は !

子どもの「虫歯のなりやすさ」の原因は、歯みがきや生活習慣だけでなく、遺伝的な影響が非常に大きいのです!

今回は、子どもの「虫歯のなりやすさ」に大きく影響する遺伝的な影響についてご紹介していきます。

 また、遺伝的に虫歯になりやすい子はどうすれば虫歯を予防できるか?という点についてもお話しします。

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子どもが虫歯になりやすいのは歯みがきや生活習慣がダメだからじゃない!重要なのは遺伝子

 虫歯のなりやすさには遺伝子のタイプが大きく影響しています。

 日本大学 松戸歯学部 小児歯科学より2015年に報告された論文「齲蝕発症に関わる遺伝要因の探索」と、北海道医療大学 歯学部より同じく2015年に報告された論文「う蝕リスクの遺伝子変異」によると、虫歯のなりやすさに関連する遺伝子が複数報告されています。


 例えば、「HLA-DRB1」という遺伝子に特定の変異がある子どもは、その特定変異がない子どもに比べると、なんと、10倍も虫歯になりやすいそうです!

 また、「DEFB1」という遺伝子に特定の変異がある子どもは、その特定変異がない子どもに比べると、5倍も虫歯になりやすいそうです。

この事実を知れば、子どもの虫歯は「親が歯みがきをちゃんとしているか、していないか」だけの問題ではない!ということが分かりますね。


 上の二つの遺伝子以外にも、虫歯のなりやすさに関係している遺伝子はたくさんあります。

歯のエナメル質タンパクを制御する遺伝子
エナメル芽細胞のエナメル質形成能に関わる遺伝子
歯の象牙質の劣化に関与している遺伝子
唾液中のタンパク質遺伝子
  • PRP(酸性プロリンリッチタンパク:唾液中に含まれるタンパク質で、ペリクル(歯の表面を覆ってエナメル質を保護している膜)の作製に関与している)
  • CA6(炭酸脱水酵素Carbonic anhydrase VI
免疫応答に関わる遺伝子
食の嗜好に関係する味覚関連遺伝子

虫歯のなりやすさには、こんなにたくさんの遺伝子が関係しているんですね。

 今後も、さらに新たな遺伝子と虫歯のなりやすさの関係が報告されるかもしれません。

 つまり、虫歯のなりやすさは、歯のエナメル質の性質、よだれの多さやその性質、虫歯菌への免疫力、味覚(好みやすい食べ物)など、その子の遺伝的な性質が大きく関わって決まっているということです。

子どもの虫歯に関連する遺伝子を調べたいときは、どうしたら良い?

 では、実際に自分の子どもの遺伝子はどうなのか、気になりますよね。

もし、特定の変異があると虫歯に10倍なりやすいHLA-DRB1遺伝子に変異があったらどうしよう…。

 親としては非常に気になるところだと思います。

でも、がんや遺伝病などと違って、虫歯に関係する遺伝子の検査をやってくれる施設なんてないですよね…。

 そこでおすすめなのは、自宅でできる遺伝子検査です。

 こちらの遺伝子検査キットなら、HLA-DRB1遺伝子を含む1,400以上の遺伝子について調べられます。↓

 ただ、高価なものですし、将来かかる可能性の高い病気や体型、頭の良さなども分かってしまう検査キットなので、利用される場合は事前によく検討されるのが良いと思います。

遺伝的な原因の他に「虫歯のなりやすさ」に影響するもの

 遺伝子のタイプ以外にも「虫歯のなりやすさ」に影響を与えるものがあります。

その他の虫歯のなりやすさに影響する要因① 虫歯菌(ミュータンス菌)が口の中にいるかどうか

 虫歯になる子と ならない子の違いで有名なのは、虫歯菌(ミュータンス菌)のいる・いないの差があります。

 これは、自治体で行われている1歳半検診の虫歯予測テスト(虫歯菌検査)によって結果がわかります。

うちの息子は4段階評価で上から2番目「やや虫歯になりやすい(+1)」という結果でした。

虫歯予測テストとは?

 子どもは、生まれた時には口の内に菌が全くいない状態なのですが、後から食事や親などとの接触によって、口の内に細菌を保持するようになります。

 その中で、虫歯の主な原因の一つと考えられている「ミュータンス菌」が口の中にいるかどうかや、そのミュータンス菌の糖から酸を作り出す度合いが虫歯のなりやすさに影響していると考えられています。

 そこで、検査では唾液から細菌を採取し、糖を含んだ培養液に浸け、ミュータンス菌の有無や酸を作り出す強さを調べます。

 検査結果は4段階評価で、「虫歯の心配はない」「やや虫歯になりやすい(+1)」「虫歯になりやすい(+2)」「かなり虫歯になりやすい(+3)」だったと思います。(←うろ覚え…)

  ミュータンス菌も虫歯のなりやすさに影響しますが、それが全てではありません。

 事実、うちの息子は「やや虫歯になりやすい(+1)」という結果でありながら、歯みがき嫌いでしっかり歯みがきできていなかった日が多かったにもかかわらず、今まで一度も虫歯になったことはありません。(※歯みがきが不要だと言っているわけではないです。)

その他の虫歯のなりやすさに影響する要因② よだれの量が多いか・少ないか

 根本的には遺伝的影響ということになると思いますが、よだれの量や歯並びの良さも虫歯のなりやすさに大きく影響しています

 よだれは口の中のpHを安定させる働きがあります。

 先ほど紹介した、ミュータンス菌(虫歯菌)は食べ物を分解して口の中で酸をつくり出すのですが、その酸によって口の中がpH5.5以下になると歯が溶け出すとされています。

 よだれは、その下がったpHを中性(pH7.0前後)に戻してくれます

昔からよくよだれが多いと虫歯になりにくいと言われているのは、こうした理由だったんですね。

うちの息子は2歳7ヶ月までよだれかけをしていたほど よだれが多い子なので、体質的に虫歯になりにくいのだと思います。

その他の虫歯のなりやすさに影響する要因③ 歯並びがよいかどうか(適度に隙間があるかどうか)

 歯みがきでしっかりと食べかすを取り除くことができるかどうか、あるいは、お茶やお水などを飲む時に流しとることができるかどうかに関係しています。

うちの息子は今のところ、歯と歯の間に適度に隙間が空いていおり、歯並びもよいので、そのおかげもあって虫歯が防げているのだと思います。

 歯の間に食べ物が残っている状態というのは、ミュータンス菌が食べ物を分解して酸を作り続けている状態ということなので、食事が終わったらできるだけ早く口の中(歯の隙間)から食べ物を取り除いてあげることが虫歯の予防に役立ちます。

虫歯になりやすい子どもの歯を虫歯から守る方法

 残念ながら遺伝的または体質的に虫歯になりやすい子どもは、虫歯になりにくい子よりもさらに虫歯にならないように気をつける必要があります。

虫歯を防ぐ4つの習慣
    • できるだけ口の中に食べ物や、水やお茶以外の飲み物が入っている時間・回数を少なくする。
    • 食べたり飲んだりした後、かならず水やお茶を飲ませる。歯並びが悪い場合は、歯の隙間を意識して歯みがきをする(必要ならフロスも)。
    • 口の中の免疫力(虫歯菌の繁殖を抑える作用)を保つために、しっかりと睡眠をとる&ストレスや運動不足などにも気を付ける
    • 歯が溶けやすい(pHが低い)飲み物はできるだけ飲まないようにする。飲んだ後は、必ず水などを飲んで口の中を中性(pH7程度)に戻すように心掛けを。

虫歯になりやすい飲み物のpH解説図

pHが低い(酸が強い)飲み物はより歯を溶かしやすいので注意!

 特に、口の中に食べ物が入っている時間と回数を減らすことは、虫歯を予防するために一番効果的な方法らしいです。(←かかりつけの歯医者さんに聞きました) 

息子は平日の昼間は保育園に通っているので、食事やおやつの時間が決まっています。
また、お休みの日でも家でお菓子をダラダラと食べることはありません。
そのおかげで、口の中に食べ物が入っている時間や回数が少なく、虫歯を防げているのだと思います。


 ところで、虫歯予防に有効とされる「フッ素コーティング(フッ素を歯に塗る方法)」ですが、岡山協立病院の歯科サイト「 虫歯予防におけるフッ素の効果」によると、フッ素コーティングでは2~3割程度しか虫歯を防げないそうです。

 歯をフッ素コーティングしてもらったからと言って、その他の虫歯予防をおろそかにしてはいけないようですね。


 また、市販の「虫歯予防タブレット(ラムネみたいなやつ)」は効果が不確かなものが多いです。

 うちの息子のかかりつけの歯医者さんに商品を見せて聞いたところ、「おまじない程度でしょう」と言われてしまいました。


 一方、キシリトールガムは歯医者さんでもおススメの虫歯予防だそうです。

 歯みがきを嫌がるお子さんは特に、食後にキシリトールガムを噛むことで歯垢がかなり改善されたそうです。

 ただし、スーパーなどで売っているものではなく、キシリトール100%のガムでないと効果はないそうです。

 市販のものはキシリトール以外の糖が入っているので、それを虫歯菌が食べて酸を作ってしまうそうです。

 わが家ではこちらの↓キシリトール100%のガムを習慣的に噛んでいます。

 特に青りんご味のガムやオレンジ味のガムが息子のお気に入りです。 

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まとめ―子どもの虫歯のなりやすさは歯みがきや生活習慣よりも遺伝的・体質的な原因によって大きく影響されている

 では、これまでのお話をまとめます。

子どもの虫歯になりやすさを決める要因
    1. 遺伝子の変異タイプによって大きく影響される。
    2. 遺伝子以外にも、口の中のミュータンス菌(虫歯菌)の有無や酸をつくる強さが関係している
    3. よだれの量や歯並びの良さなどの体質も関係している。

 ですから、かならずしも子どもの虫歯=親の怠慢ではありませんので、お子さんに虫歯ができてしまったからと言って、必要以上に気に病んだり、親としての責任を感じすぎる必要はありません。

 しかし、自分の子どもが虫歯になりやすい体質かも知れないと思ったときは、他の子よりも何倍も虫歯にならないように気を付ける必要があります

万一、お子さんが「HLA-DRB1」という遺伝子に特定の変異を持っていた場合は、その特定変異がないお子さんに比べると10倍も虫歯になりやすいですので…。

虫歯を防ぐ4つの習慣
    • できるだけ口の中に食べ物や、水やお茶以外の飲み物が入っている時間・回数を少なくする。
    • 食べたり飲んだりした後、かならず水やお茶を飲ませる。歯並びが悪い場合は、歯の隙間を意識して歯みがきをする(必要ならフロスも)。
    • 口の中の免疫力(虫歯菌の繁殖を抑える作用)を保つために、しっかりと睡眠をとる&ストレスや運動不足などにも気を付ける
    • 歯が溶けやすい(pHが低い)飲み物はできるだけ飲まないようにする。飲んだ後は、必ず水などを飲んで口の中を中性(pH7程度)に戻すように心掛けを。

虫歯になりやすい飲み物のpH解説図

pHが低い(酸が強い)飲み物はより歯を溶かしやすいので注意!

 特に、口の中に食べ物が入っている時間と回数を減らすことは、虫歯を予防するために一番効果的な方法らしいです。

親子で一緒に虫歯になりにくい習慣を身につけ、親子ともに虫歯フリーな口内環境を保ちたいものですね。

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